「日本公認会計士協会の株式等鑑定評価、マニュアルに基づく株価評価」
ポイント
 日本公認会計士協会の「株式等鑑定評価マニュアル」に記載されている主要な株価評価の方法
  1. 純資産方式
  2. 収益方式
  3. 配当方式
  4. 比準方式
  5. 併用方式
解説
 日本公認会計士協会の「株式等鑑定評価マニュアル」に記載されている主要な株価評価の方法は次のとおりです。
1.純資産方式
 企業のストックとしての純資産に着目して、企業の価値又は株価等を評価する方式です。
(1) 簿価純資産法
 企業の適正な帳簿価額による純資産を発行済株式総数で除して算出します。企業に含み損益が内在する場合は実態と遊離した価格が算出されることになります。簿価純資産法は、評価会社に多額の含み損、含み益が内在しないことが採用の条件となります。
計算式
一株当たりの価格=簿価純資産価額÷発行済株式総数
(2) 時価純資産法
企業の資産を時価純資産で再評価し、負債は要弁済額で計上して求めた純資産で株価を求める方法です。法人税等を控除する方法と控除しない方法の2つがあります。計算式を示すと次のとおりです。
計算式を示すと次のとおりです。
法人税等控除方式
一株当たりの価格=(時価純資産価額−含み益対応法人税等)÷発行済株式総数
法人税等非控除方式
一株当たりの価格=時価純資産価額÷発行済株式総数
2.収益方式
 企業のフローとしての収益又は利益に着目して、企業の価値及び株価等を評価する方式です。この方式によって算定された株価は企業の動的価値を現し、継続企業を評価する場合最も優れた方法です。その反面、評価額が将来収益に依存しており、その根拠が不確実となる欠点を持っています。
(1) 収益還元法
 元本と果実の関係から投資利益を果実と見て、元本である企業資本を評価する方法を収益還元法といいます。
 計算式を示すと次のとおりです。
    一株当たりの価格=(将来の予想年間税引後利益÷資本還元率)÷発行済株式総数
(2) DCF法(DCF:Discounted Cash Flow)
 企業が将来獲得するであろうキャッシュフローを資本還元率で現在価値に還元して算出します。
 計算式
    一株当たりの価格=将来の予想DCFの合計額÷発行済株式総数
   将来の予想ディスカウントキャッシュフローの合計額は、各年度のキャッシュフローを年度別に複利現価率で割引いて合計したものです。
3.配当方式
企業の利益処分のフローとしての配当に着目して、企業の価値及び株価を評価する方式です。
(1) 配当還元法
 果実である配当から擬制資本である株式投資額を評価する方法です。
  計算式を示すと次のとおりです。
    一株当たりの価格=(将来の年間予想配当÷資本還元率)÷発行済株式総数
(2) ゴードンモデル法
 配当還元法をさらに発展させた方法で、企業が獲得した利益のうち、配当に回されなかった内部留保額は、再投資によって将来の利益を生み、配当の増加を期待できるものとして、それを加味して株価を評価する方法です。
  計算式を示すと次のとおりです。
    一株当たりの価格=一株当たり配当金÷(資本還元率−投資利益率×内部留保率)
    ※投資利益率…内部留保金とそれらが稼ぐ税引後利益との割合をいい、通常自己資本利益率を使用します。
※内部留保率…税引後利益のうち留保される部分の比率をいいます。
4.比準方式
 評価対象会社と、業種、規模等が類似する公開会社(類似会社)又は同じ業種の公開会社の平均と比較して、会社の株価を評価する方式です。
(1) 類似会社比準法
 類似会社には、原則として、評価会社と事業内容、企業規模、収益の状況などで比較的類似すると見られる複数の会社を選定します。公開会社等大規模の会社との比較であるため、評価する会社が大規模でなければ類似性に乏しく適用できません。また、会社の規模、事業の内容などが類似していることが必要です。
 計算式を示すと次のとおりです。
   

B’

C’ D’
B  C  D 
A× ━━━━━━━ ×L=A’
    A=類似会社平均株価
    B=類似会社平均一株当たり配当金額
    C=類似会社平均一株当たり税込純利益
    D=類似会社平均一株当たり純資産価格
    A′=評価会社株価
    B′=評価会社一株当たり配当金額
    C′=評価会社一株当たり税込純利益
    D′=評価会社一株当たり純資産価格
    Lは類似安定度を加味します。
(2) 類似業種比準法(国税庁類似業種比準法)
 市場性を持つ株式の価格をモデルに見立てて類似標本会社と評価会社のそれぞれ一株当たりの配当金額、年利益金額、簿価純資産額を対比させて評価する方法です。計算式を示すと次のとおりです。
   

B’

C’ D’
B  C  D 
A× ━━━━━━━ ×0.7
    A=課税時期の属する月以前3カ月間の各月及び前年平均の類似業種株価のうち最も低いもの
    B=課税時期の属する年の類似業種の一株当たり配当金額
    C=課税時期の属する年の類似業種の一株当たり年利益金額
    D=課税時期の属する年の類似業種の一株当たり資産価額(帳簿価額により計算した金額)
    B′=評価会社の直前期末における一株当たり配当金額
    C′=評価会社の直前期末における一株当たり年利益金額
    D′=評価会社の直前期末における一株当たり純資産価額(帳簿価額により計算した金額)
5.併用方式
 上述した各種方式を一定のルールで組み合わせて、株価を評価する方式です。 評価対象会社の純資産(ストック)及び収益(フロー)に着目して、ストックとフローの価格を単純又は加重平均して算出します。
一株当たりの価格=ストック価格×n+フロー価格×(1−n)
株主の立場により次の二とおりの計算式が考えられます。
経営支配の可能な株主の所有する株式価格
 原則として、過半数を所有する株主は経営を支配することにより、残余財産分配請求権、分配可能利益等処分権を行使することができるから、当該株式価格は、ストックの側面である時価純資産法とフローの側面である収益還元法の両者を加味して求めます。
計算式
      一株当たりの価格=一株当たり時価純資産価格×n+一株当たり収益還元価格×(1−n)
    経営支配とは関係がない株主の所有する株式価格
     原則として、少数株主は経営支配と関係がないが、残余財産分配請求権、配当請求権を持っているから当該株式価格は、ストックの側面である時価純資産法と、フローの側面である配当還元法の両者を加味して求めます。
  計算式
      一株当たりの価格=一株当たり時価純資産価格×n+一株当たり配当還元価格×(1−n)
6.評価方式の選択
評価方式の選択にあたっては、評価の目的及び条件に基づき、過去の売買事例、対象会社の規模、経営権の移動の有無、売手・買手の同族グループへの帰属状況及び既往の株式所有状況等の諸状況を勘案して行います。
(1) 過去に売買事例がある場合でその価格に客観性が認められる場合は評価額として採用し得ます。
(2) 対象会社の規模が大きく、公開会社に準ずる場合は、比準方式が採用されます。
(3) 事業継続性の低い会社は純資産方式のウエイトが高いが、事業の立地条件が良かったり、従業員や事業所の数等の事業規模が大きく、事業継続性の高い会社は収益方式のウエートが高くなります。
(4) 経営権の移動を伴う場合は、純資産方式、収益方式及び両者の方式を加重平均する併用方式が採用されます。経営権の移動を伴わない場合で特に売買株数が少ない場合には、配当方式のウエートが高くなります。
(5) 売手・買手の一方又は双方が同族グループへ帰属している場合は、原則として売買株数が少なくても支配権の移動があるものとみなして、純資産方式と収益方式が考慮されます。

 

「資金計画・資金調達・資本政策」企業育成支援研究会編 エンゼル証券株式会社編集協力(第一法規出版株式会社1999年発行)より抜粋